第10号 西○の通り道にあった富士山
              「日本最高峰富士山剣ヶ峰3,776米に立つ」より

 

西○の通り道にあった富士山

1984年7月25日〜8月5日
参加者&紀行文  
西田
 
 星が出ている。昨日とはうって変わって良い天気だ。河口湖の駅に丸一日以上いた。富士山という山を通って太平洋に行くために。
 同志社大の人に缶コーヒーを貰い、いざ出発。しばらく走り富士スバルラインゲートをくぐる。ラジオを聞きながら黙々と登る。車が何台か走り去って行く。はるか左前方の山の斜面に光が見える。あれが富士山かと思ったりしているうちに、楽々五合目に着く。只今A.M2:00。ゲートより約2時間半で登ったことになる。
 大きな土産屋さんに入り、五合目バッジを買う。A.M2:30、担ぎの用意をして登山道に入る。ポケットライトの光では何処が道か解らず、しばらく行き引きを繰り返す。ここで運良く家族連れが何組か来たので、その後に付いて再度登山道へ。
 六合目に着く頃には疲れが出てきた。星が落ちてきそうな夜である。七合目手前で夜が明けてきた。雲が眼下に広がり、南アルプスの山々が頂を見せている。そして、それらの山々が朝日に映し出され、いっそう映えてくる。感動だった。しばらく見ていたが、今日中に頂上に立ち富士宮まで降りなくてはならない。
 七合目に着いた。山小屋の前で一息いれていると、昨日、河口湖の駅で会った山岳サイクリスト6名がやって来て、しばらく話をする。彼等はこの山小屋に泊まったらしい。もう一人そこに泊まっていたサイクリストは、何と甲府駅で一緒にパンを囓った奴だった。ちなみに皆高3である。ここで大休止をとる。しばらくして大学生のサイクリスト2名が登って来た。もうすこし下の山小屋に泊まったそうである。
 高3組が出発した。しばらくして大学生の人と登り出す。八合目判迄は、世間話に花を咲かせながら登るが、そこからは先に行ってもらう。その後は、山岳サイクリングの遅れた奴一名と合流する。口ばかり動いて足が前に出ない。しかし、それもしばらくして「つらい、もう嫌だ。」になる。10mも担ぎが続かないのである。少し行った辺りで、中一と小二位の女の子が仲間に加わり4人で登る。
 九合目半、頂上はあと少し。手を延ばせば届く位だ。引き返す人が沢山いる。私はもう体がいうことが効かない。つらい、つらい。これしか言葉がでない・・・・・ もう少しで頂上。さっきの女の子や、先に登った奴等が応援してくれる。一気に登ってやろうと思った。
 頂上の鳥居をくぐった。声も出なかった。しばらく死んでいた。さっきの女の子と別れて、皆の後を追って本頂上へ向かう。噴火口が見える所まで来て、目の前が真っ暗になった。何と、本頂上の測候所が正面はるか向こうに見えるのである。皆は反時計回りで一度下って本頂上の上りにかかっている。私は、皆とは逆回りの方が楽そうだし、途中に郵便局もあるはずだと言うことで反対方向に進む。(まぁ、どっちから行ってもたいして変わらんですな!)途中、郵便局で下界へ暑中見舞葉書を出す。皆がいる測候所前の最後の急々々坂を風に飛ばされそうになりながら、あと2、3mで皆のいるところに着くんだけど足が前に出ない。何故かこの時やたらと可笑しくなった。(別に私は○印ではない。)三名に手伝ってもらって、やっと皆に合流。しかし大学生二名はすでに下ったとのこと。
 しばらく話をし、本頂上の「日本最高峰富士山剣ヶ峰三七七六米」の石碑まで最後の担ぎ。記念写真をとる。五合目から担ぎ始めて11時間あまりの死闘だった。空が青い。雲がはるか下の方から徐々に上がってくるのが見える。しかし、なにより嬉しかったのは、もう自転車を担がなくてもいいということだ。
 山岳サイクリングの連中に別れを告げ、富士宮口よりブルドーザー道へ。ここで御殿場から登ってきた高3と高2のサイクリストと一緒に、砂煙をあげ、足でブレーキをかけながら下る。驚いたことに一人は完全ノーマルのロードレーサー、もう一人は498シリーズ。
 彼等と別れてから、一人孤独に下る。「下る。」と言っても余りの急坂に乗れるところはほとんどない。途中、道を間違えたのではないかと不安になる。ただ自転車を押し下らせた。
 所々乗るが止まらない。なんとか登山道と交わりながら下るようになり、ホッとする。しかし、ブルドーザー道を出るときの最後くらいと、乗ったのがいけなかった。力一杯ブレーキをかけたが止まらなくなり、仕方なく自転車を投げ飛ばしてしまった。もちろん登山客らは、尊敬のまなざしで私の顔を見ていた。
 新五合目でしばらく休み、富士スカイラインを下る。良い道であるが、体がいうことを効かず自転車が外に膨らみ、ガードレールと何度もお友達になりそうになる。
 夕闇迫る新富士宮駅に着き、メシを食う。気持ちの整理がつかない内に(富士山に登った実感。何のために登ったのか。etc、、)睡魔に襲われる。
 「今はとにかく寝よう。また明日走らなければならないんだ。」  END
 

富士山

3,776mに立つより、富士山が見える峠に行きたいですな。
たとえば、二十曲峠、
後は、、、思い出せない、、、(笑)

ところで、彼の現状を知っている人いるの?




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